デイジーの日記3(小説)
9日目
やっほー!絶好調のデイジーだよ。
今日は馬車に揺られてドングリさんの村まで来たんだ。
今日1日すっごく楽しかったから、何があったか書いていくね。
村に着いたら、まず村長さんに挨拶をして、
それからドングリさんの家族を紹介してもらった。
ドングリさんは7人家族で、お父さんお母さん、お兄さんが1人に弟さんが2人、妹さんが1人。お兄さんは街に出稼ぎに出てるんだって。
妹のクルミちゃんが、私の2つ年下で、村の色んな場所を案内してくれた。
赤毛の三つ編みがぴょんぴょん跳ねていてとっても可愛かった。
私がクルミちゃんのお仕事を手伝っている間、お兄さまとドングリさんは村の働き手の人たちと壊れた魔法道具を見に行ったみたい。
お昼ご飯に出てきたチーズがとっても美味しかった!
牛に餌をやるのはクルミちゃんの仕事なんだって。すごいよね。
その後はドングリさんの弟2人が作ってるっていう秘密基地をクルミちゃんと一緒にこっそり見に行った。
もちろん弟さんにも誰にも言わずにね。
ここに来たことは誰にも内緒だよって2人で約束した。
夜は村中で宴会になっちゃって、お兄さまとドングリさんは2人で話す時間はなかったみたい。なんだか残念だ。
2人にも沢山話をして欲しいのに。
あぁ、今日はとにかく歩き回って沢山しゃべってとても眠いんだ。
だからまた明日!
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10日目
生きてる羊の毛って、ふわふわなだけじゃなくて少しごわごわしてるって知ってた?毛を刈って、洗ってからふわふわになるんだって。
私がクルミちゃんと羊のお世話を手伝っている間に、お兄さまは魔法道具の修理を終わらせたらしい。どころか、魔法の力を時々補充すれば効率よく水が巡るように少し改造までしたみたい。
魔法の力が切れても、少し大変だけど水の力と人力だけでも水は巡るんだって。
興奮気味にドングリさんが話してて、嬉しそうだったな。
私自身の名誉のために、魔法の力を魔法道具に補充するお仕事もしたことをここに記しておく!
(学校には、お兄さまが「社会奉仕活動の一環として魔法を使用した」と一筆入れておくんだって。真面目だよね)
今夜も宴会になっちゃって、2人がまた話せなかったらどうしようと思っていたけど、お兄さまがドングリさんを誘って建物の外に出て行くのを見た。たまにはやるじゃん。
2人は、私がそろそろ布団に入ろうかなと思う時間まで宴会の場に戻って来なかった。
明日は、どんな報告が聞けるかな。
今夜もぐっすり眠れそう。
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11日目
今日は良いお知らせが2つあります!
1つ目は、クルミちゃんと文通することになったこと!
魔法道具も修理されたし、もうお別れで寂しいねって昨晩話していたけど、クルミちゃんはこっそりお手紙を書いてくれていたみたいで、今日の朝におずおずと渡してくれた。
どうして遠慮がちだったかっていうと、クルミちゃんは字を書く練習中で、まだ下手なのを気にしてたんだって!
まったく気にする必要なんかないのに。
私は嬉しくなっちゃって、家に帰ったらすぐに手紙を出すし、学校に戻っても家から手紙を転送してもらって絶対にお返事書くからねって話して、クルミちゃんをギューっと抱きしめた。
お友達ができてすごく嬉しい。
実は私、友達が少ないので。これはお兄さまには秘密だけど・・・
2つ目の良いお知らせは、ドングリさんが家の庭師になってくれること!
ドングリさんの家は食べ盛りの家族が多いから、出稼ぎに出ている一番上のお兄さんみたいに、定期的にお給金がもらえる仕事を探していたんだって。
私が望んでいた展開になって、すっごく嬉しかった!
実を言うと、私、お兄さまとドングリさんがお付き合いを始めるんじゃないかって思ってた。
そういう報告を聞くことになるんじゃないかって。
だって、昨晩宴会から抜け出した2人が戻ってきたとき、ドングリさんの顔は真っ赤だったし、お兄さまの顔も少し赤くなっていたから。
あれはお酒のせいじゃなかった。
もう、絶対に告白したと思ったのに!
お兄さまってばドングリさんを庭師に誘うだけで精一杯だったみたい。
でも、まぁいいかな。
ドングリさんはまるで告白されたみたいな顔をしていたし。
これからは住み込みで家の温室と庭を管理してくれることになったから、時間はいくらでもあるしね。
私は帰りの馬車に揺られながら、学校で怪我をさせてしまった私の数少ない友達のことを考えた。
帰ったら素直に謝って、仲直りをしよう。
気持ちはちゃんと伝え合わないと、ややこしくなるだけだってお兄さまとドングリさんを見てて思ったから。
そうして仲直りをしたら、新しくできた友達のことも話して、そして、お兄さまとドングリさんを幸せなカップルにする私の計画を話して聞かせるのだ。
だって2人がカップルになれば、ドングリさんもずっと家にいてくれるし、クルミちゃんとも親戚になれるからね!
私がにやにやと笑っているのを見て、ドングリさんは不思議そうな顔をして、お兄さまは何かたくらんでいるな・・・と眉間にしわをよせて私を見ていた。
覚悟してね。2人とも。
私、こんなに楽しくなりそうなこと、あきらめる気ないから!
デイジーの日記 終わり
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